① 統合失調症 |
○概念 |
約100人に1人発病する精神障がい。発症年齢は10代半ばから40歳くらいまでで、多くは10代後半から30代までに発病することが確認されています。 |
○原因 |
完全には解明されていないが、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの過剰活性が幻覚や妄想の発症に関与し、また、前頭葉の機能が低下していることが推定されている。「なりやすさ」については、その人のもって生まれた素質や、発達の過程で脳に生じた損傷の影響などが調査されているが、まだ十分には解明されていません。
単に遺伝だけの問題ではなく、それに何かの心理的・社会的・身体的な要因が加わると考えられています。 |
○主要な症状 |
統合失調症の症状は以下の3つに大別されます。 |
・主観的な異常体験(幻聴妄想など) |
・感情や意欲の障がい(繁盛鈍麻、無為、自閉) |
・行動面での異常(緊張病性興奮、昏迷) |
幻覚や妄想などは陽性症状、病前の機能の低下による感情や意欲の障がいなどは陰性症状といわれます。 |
○治療 |
外来治療と入院治療に分けられます。薬物療法が大きな柱となるが、その他の治療法も病相の時期(急性期、慢性期など)に応じて適宜選択されます。
一般に、陽性症状の改善や再発予防には抗精神病薬の投与が、陰性症状の治療にはリハビリテーションが有効と考えられています。 |
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② 気分障がい(うつ病と躁病) |
○概念 |
抑うつか高揚どちらかへの病的な気分(感情)の変化を基本症状とする疾病。
臨床症状によって、うつ病、うつ状態と躁状態の両方向への病的な変化である躁うつ病(双極性感情障がい)の2つに大別されます。
入院する人は少ないものの、軽度うつ病も含めると患者数はかなり多いと考えられています。(日本人の8人に1人という説もあります) |
○原因 |
抑うつ状態が生ずる場合は、概ね以下の4つの場合であると言われますが、症例ごとに臨床症状、前病歴、生活状況、性格傾向などを含む詳細な診察に基づいた、個別的・総合的な治療・援助が必要になるとされています。 |
環境因 |
人生の失意や不遇、深刻な対人関係の葛藤、不登校、失職など突然の災害、戦争、近親者の急死などの耐え難い外傷的体験による適応障がいあるいは心的外傷後ストレス障がい |
内因 |
特別の理由が無いのに、定型的な抑うつ症状が周期的に反復する |
誘発 |
環境因のような特別な理由が本人も周囲も思いあたらないにも関わらず、定型的な抑うつ症状が生活の特定の節目に出現する |
併存 |
うつ病とは違う精神疾患の経過中に、抑うつ症状が現れる場合がある |
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○うつ病の主要な症状 |
身体症状 |
中核症状:睡眠障がい、食欲の変化、体のだるさその他 :性欲減退、便秘、口渇、頭痛 など |
精神症状 |
中核症状:関心や興味の減退、意欲、行動面で気力の減退、知的活動、能力の減退
その他 :無力感、劣等感、自責感、罪責感、自信喪失、焦燥感、悲哀感 |
日内変動 |
身体・精神症状全体が朝目を覚ましたときに最も悪く、次第に軽快して、夕方から深夜には相当回復する。 |
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○治療 |
気分障がいは自然治癒傾向のある疾患。薬のない時代でも多くは自然に寛解していたらしい。しかし、自然寛解には長期間を要し、その間に自殺や事故の危険もあるため、早期治療が望ましい。 |
・薬物療法 |
うつ病や躁病には特異的に有効とされている薬物の、抗うつ薬や抗躁薬があります。また躁状態やうつ状態の再発を予防する薬物もあります。早期に薬物療法を開始すれば、治療期間を短縮できます。 |
・精神療法 |
感情障がいの原因には程度の差こそあれ、環境、ストレスやライフイベントが関連しています。
そこで、これらに対処する力を得るために精神療法は有効です。しかし、重度のうつ状態のときに思考制止、極度の不安のために精神療法的介入が困難であることもしばしばあります。 |
・心身の休養と家族介入 |
うつ病は”頭の電池切れ”の状態であるから、心身の休養が必要です。
また患者が休養できる環境を整えるために家族の協力が不可欠です。 |