親なき後の問題

親なき後の問題とは

親なき後の問題とは知的障がい者・精神障がい者・身体障がい者の子供をもつ親が抱える問題であります。
●子供より先に死亡したり、病気(認知症等)の際、子供の身上監護(療養看護)財産管理を誰に託すか。
●親の死亡後の子供への財産承継をどうするか。
●在宅介護していたが、親の死亡後の子供の生活拠点や医療介護場所の確保
●将来子供が亡くなるまでの生活資金を確保できるか。
●子供が亡くなった後の子供の財産承継

問題の所在

●親なき後の問題に正面から答える法が整備されていません。
●身上監護と財産管理に関しては法律行為を行う成年後見制度で解決できないか。

どう解決するか

一番大切なのは、親が元気なうちに準備をすることであります。
病気(認知症等)になったり、事故等に遭ってからでは、遅いのです。

●成年後見制度と遺言を上手に活用する。

実際の運用

●本人に意思能力が無い場合
【子:法定後見の利用】
・複数後見人を立てる
→ 親と職業後見人と2人で後見人となり、親が万が一の場合でも職業後見人いるので安心。
【親:任意後見契約の利用】
・親の判断応力低下(認知症)に備えて、子の職業後見人と任意後見契約を結んでおく。
(親が認知症になった場合には親の財産を子供に支出する行為等について任意後見人に代理権をつけておく)
【遺言の作成】  
・障がいのある子供にできるだけ多くの財産を残す。
・遺言執行者を子の職業後見人を指定する。
【生命保険の活用】
・生命保険を障がいのある子を受け取り人とし死亡保障をかけておく。

●本人に意思能力がある場合
① 本人が成年の場合
【任意後見契約の利用】
・本人自ら任意後見契約を親以外の職業後見人と締結する。
・親も判断能力の低下に備えて、職業後見人と締結する。
【遺言の作成】
・障がいのある子供にできるだけ多くの財産を残す。
・遺言執行者を子の職業後見人を指定する。
【生命保険の活用】
・生命保険を障がいのある子を受け取り人とし死亡保障をかけておく。

② 本人が未成年の場合
【任意後見契約の利用】
・親の同意を得て本人が職業後見人と契約するか、親が子供の代理人となって任意後見契約を締結する。
・親も職業後見人と任意後見契約を締結する。
【遺言の作成】
・障がいのある子供にできるだけ多くの財産を残す。
・遺言執行者を子の職業後見人を指定する。
【生命保険の活用】
・生命保険を障がいのある子を受け取り人とし死亡保障をかけておく。

その他の解決策として

【生命保険信託】
 生命保険信託とは、親が亡くなったあとの財産管理を解決する策の一つとして開発された生命保険と信託の機能が組み合わさったものです。

 従来の生命保険では、受取人が保険金を受け取るが、生命保険信託では信託銀行が保険金を受け取り、信託財産を安全に管理・運用しながら、契約者が生前に指示した内容どおりに渡していくことが可能になりました。

 きょうだいや団体など複数の受取人を指定したり、用途や使う時期も設定できます。
【生命保険信託の契約の流れ】
①契約者は生命保険会社と保険契約を結び、保険料を支払っていく。
②保険金の使い方を具体的に定めた信託契約書を信託銀行と交わし、保険金の受取人を受託者の信託銀行に変更する。
③保険事故発生により、信託銀行が保険金の支払い請求を行う。
④保険会社から保険金を受領した信託銀行は、その管理・運用を請け負う。
⑤信託契約の指定に基づく財産交付を行う。
⑥受益者の判断能力が不十分な場合、指図権者・同意者は財産交付における指図や同意を行う。交付後の財産管理の責任は負わない。

成年後見制度とは

知的障がい、精神障害、認知症などの理由で判断能力の不十分な方々は不動産や預貯金などの財産を管理したり身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。

また、自分に不利益な契約であってもよく判断することができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。
このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが「成年後見制度」です。

事例-1

Aさんは40代の男性。
●知的障がいの判定を受け、療育手帳を所持しています。
●長い間、知的障がい者施設に入所しており、住民票も移してあります。
●今のところ、特に問題はありませんが、両親は高齢になってきており、自分たちが世話をすることができなくなったときのことを想定して、早めに成年後見制度を利用することにしました。
何らかの障がいのあるお子さんを持つご両親にとって、自分たちの死後、子供のことをどうしたらよいかは、深刻な悩みです。これは「親なき後の問題」といわれ、成年後見制度の利用によって、解決することになります。
法定後見制度では、申立ての準備を始めてから実際の制度利用までには数か月を要しますので、早めに準備を始めることが大切です。

事例-2

Bさんは20代の男性。
●知的障がいの判定を受け、療育手帳を所持しています。
●自宅はなく、知的障がい施設に入所しています。本人以外の家族も全員、知的障がいがあるためそれぞれ別の施設等で生活しています。
●障害者自立支援法の利用や財産管理のため、成年後見制度の利用を検討しています。ところが、両親はすでに他界し兄弟も同様に知的障がい者であり、他の施設で生活しているため申立て手続きやその費用の負担をすることが困難な状態です。そこで市長が申立て費用を立て替え、市長申立てをすることになりました。
市町村長申立ての際、自治体が立て替える費用は、家庭裁判所への申立て手数料、精神鑑定費用、東京法務局への登記手数料です。これらの費用については、本人に資力がある場合には、後見等が開始された後に返還する必要があります。その際には当該自治体から成年後見人に対して請求書が発行されますので本人の財産から精算を行います。

事例-3

Cさんには、知的障がいをもつ息子さんがいます。
日常生活は、両親が支えていますし、特に気になることはないようです、もっとも本人は一人っ子で、両親が亡くなってしまうと援助をしてくれる身寄りはいません。
成年後見制度の利用を勧められてはいますが、両親ともまだ元気なので、踏み切れないでいます。
年老いた母親と知的障がいの長男の二人暮らしの家庭で、母親が急死、長男も餓死というような悲劇が現実に起こっています。「いつか」ではなく、できるだけ早めの利用を勧めるべきでしょう。

inserted by FC2 system